加齢に伴い、さまざまな疾患のリスクが増えていきますが、皮膚疾患もまた高齢者に多い疾患の一つです。皮膚には、細胞や膠原繊維(コラーゲン)などがあり、これらは加齢に伴って減少していきますので、必然的に皮膚疾患発症のリスクが高まります。

 

また、免疫力も低下していきますので、外的・内的要因に関わらず、皮膚への刺激が増え、ウイルス感染のリスクも高まります。このような皮膚疾患を防ぐためには、スキンケアはもちろん、食事や睡眠などの生活全般の改善、外傷予防などの直接的な予防法が必要不可欠となります。

 

 

皮膚の老化現象

 

加齢に伴い、様々な臓器で老化といわれる現症が起こります。皮膚も例外ではなく、皮膚の老化現症といわれるものがあります。皮膚の脂質(あぶら分)が減少し、発汗も少なくなるため、かさかさと乾燥した皮膚に変わってきます。皮膚の細胞・膠原繊維(コラーゲン)も減少するため、皮膚が薄くなり、張りが無くなって、しわが増えます。

 

また、皮膚は体を守るバリアとして免疫機能(外的異物を攻撃する機能)を持っていますが、加齢とともに免疫能が低下してきます。その他に長年の日光(紫外線)曝露による皮膚の変化が加わり、露光部位の老人特有の腫瘍性変化を来すことがあります。

 

 

高齢者によく見られる色素異常

 

加齢に伴って色素の異常がみられることがあります。色素異常に起因するものには、「老人性色素斑」「老人性白斑」「老人性紫斑」などがありますが、いずれも疾患ではなく、症状に分類されます。

 

■老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)

長年の日光(紫外線)曝露により、皮膚に色素(メラニン)が沈着することがあります。顔、手などに多く、平らな円形の茶色っぽい皮膚変化として認められます。

 

■老人性白斑(ろうじんせいはくはん)

老人性色素斑とは逆に円形の色調の薄くなった状態です。これは老化により色素を作る細胞(メラノサイト)が減少するためと考えられています。

 

■老人性紫斑(ろうじんせいしはん)

腕、手などに多く見られる皮下出血で、打撲後の内出血と同じ状態です。老化によって皮化の血管周囲の組織がもろくなり、出血しやすくなるためにできます。自覚症状のない赤紫色斑で、多くは自然に消退します。

 

 

高齢者によく見られる腫瘍

 

一般的に加齢とともに皮膚の良性・悪性腫瘍は増加する傾向にありますが、比較的多く見られる腫瘍を次に挙げます。

 

■老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)

顔面・胸部などに多く見られる表面に凹凸を伴う黒色の腫瘍です。良性腫瘍ですが、悪性皮膚腫瘍(悪性黒色腫、基底細胞上皮腫など)と似ているため、その鑑別が重要になります。治療は切除術が中心となります。

 

■老人性血管腫(ろうじんせいけっかんしゅ)

おもに胸、背中にみられる数mm大までの赤い隆起です。毛細血管の増加と拡張によってできます。

 

■陰嚢被角血管腫(いんのうひかくけっかんしゅ)

中年以降の男性陰嚢に多発する数mm大までの暗赤色の隆起です。

 

■老人性脂腺増殖症(ろうじんせいしせんぞうしょくしょう)

額・頬・鼻などに生じる2~3mm大の黄色っぽい隆起です。脂ぎった顔の人によく見られます。

 

■老人性面皰(ろうじんせいめんぽう)

男性の外眼角(目じり)付近に多くみられる毛孔(毛あな)に一致した黒色の点状物です。圧迫により黒色の点状物が排出されます。

 

■アクロコルドン

中年以降の女性の頚・胸・腋に多く見られる数mm大の褐色の皮膚の突起です。一種の皮膚の老化現象とされています。

 

■老人性角化症(ろうじんせいかくかしょう)

顔・手背など露光部に好発する褐色の少し隆起した皮膚変化で、表面に鱗屑 (かさかさした、皮膚のはがれ落ちる前の状態のもの)が付着したものです。一種の前癌状態で切除術などが必要です。

 

■白板症(はくばんしょう)

口腔・外陰部などに生じる白色の軽度隆起する粘膜・皮膚変化で、一種の前癌状態です。

 

■ボーエン病

軽度隆起する紅褐色の皮膚変化として現れ、一見すると湿疹ににています。一種の前癌状態で切除術などが必要です。

 

■パジェット病

陰部に湿疹に似た反応として現れますが、直りにくく、ただれたようになります。一種の皮膚癌で切除術が必要です。

 

■基底細胞上皮腫

顔面に好発するつやのある黒褐色の腫瘤です。一種の皮膚癌で切除術などが必要です。転移することは希ですが、放置すると深部に進行します。

 

■有棘細胞癌

大きく隆起する腫瘤で、瘢痕(きずあと)・熱傷後の瘢痕に出現しやすい傾向があります。皮膚癌で、切除術が必要です。

 

 

高齢者によく見られる感染症・自己免疫疾患

 

加齢に伴う免疫能力の低下により、細菌やウイルスに感染しやすくなります。また、加齢とともに自己抗体(自分の体に対する間違った抗体)の出現頻度が高くなり、その結果、自己免疫疾患が引き起こされることがあります。

 

■帯状疱疹

神経に潜んでいる水痘(みずぼうそう)のウイルスが再活性化し起きるもので、側胸部・脇腹に帯状に水疱が出現します。体調不良の時などいずれの年代にも出現しますが、高齢者になると痛みが強くなる傾向があり、水疱消失後も痛みだけが長期に残ることがあります。抗ウイルス薬や鎮痛薬を使います。

 

■水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)

大腿内側、腋、腕を中心とした全身に水疱(みずぶくれ)と紅色の皮膚変化が誘因なく出現し、かゆみを伴いことが多いです。水疱は口の中にも出現することがあります。診断のために皮膚の検査が必要で、入院治療を必要とします。

 

 

高齢者の湿疹とスキンケア

 

年齢を加えてくると、皮膚の機能が低下してきます。具体的には皮脂(皮膚のあぶら分)が少なくなり、発汗が少なくなります。そのため、湿気の多い夏はしっとりしていても、乾燥する冬になると肌がカサカサしてかゆみがでやすくなります。このときに強く掻いていたり、お風呂でナイロンタオルなど硬いタオルでこすっていると、肌が荒れて湿疹ができやすくなります。

 

ひどいときには全身の皮膚が荒れて、真っ赤になってしまいます。かゆみはお風呂上がりや布団に入ったときなど暖まると強くなり、こうなると夜も眠れない状態になってしまいます。これが高齢者によく見られる老人性乾皮症、皮膚掻痒症です。

 

湿疹になってしまうとその治療が優先となりますが、元々に皮脂が少なくなり肌が乾燥するという状態がありますから、普段から皮膚のあぶら分を補うことにより湿疹ができることを予防することが重要になります。