高血圧は加齢とともに進行する動脈硬化を促進し、やがて脳卒中、心臓発作、腎臓障害など命にかかわる病気を引き起こし、また最近問題となっているボケの原因にもなる病気です。また、70才以上では約2/3の人が高血圧症であり、日本で最も患者数の多い病気です。

 

高血圧の怖いところは、頭痛、めまいなどの症状がある場合もありますが、多くの場合無症状で、高血圧症であることに気づかない、気づいていたとしても放置していることがしばしばあることです。

 

高血圧症は生活習慣病の一つで、食事や生活上の注意、あるいは適度の運動が高血圧治療の基本となります。しかし、これらの注意で血圧がコントロールできない場合、薬による治療が必要になります。

 

高血圧症の治療は長期間続ける必要がありますが、症状も少ないことから継続することはなかなか大変です。このため高血圧がどのような病気で、放置するとどうなるか、またどのように治療するのか、知識を深めていただきたいと思います。(関連:サラサラ・ドロドロの観点からみる血液と病気の関係

 

 

高血圧とは

 

心臓が収縮、拡張を繰り返すことにより全身に血液を送り出していますが、収縮したときの血圧が「収縮期血圧」で一般に、「最高血圧」とか単に「上の血圧」といいます。心臓が拡張して最も血圧が低くなった時の血圧が「拡張期血圧」で一般に、「最小血圧」とか単に「下の血圧」といいます。

 

このように血圧には収縮期血圧と拡張期血圧があります。成人と高齢者では、安静時において収縮期血圧が140mmHg以上かつ/あるいは拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧症と定義しています。また、最近では血圧値により高血圧症の重症度分類を行っています(表1)。

 

成人と高齢者における血圧の分類

 

ただし、血圧は様々な因子により影響を受けるため一度の測定で血圧が高かったとしてもあまり心配する必要はありません。特に検診などで初めて血圧を測定した時、その値により今後どうすればよいか表2に示します。

 

初回血圧測定値とその後の診察予定

 

 

血圧の変動と24時間血圧測定

 

血圧は日常の動作、運動、精神的緊張、ストレスなどですぐに上昇します。また、リラックスすることにより低下します。一日の内では昼は高く、夜は低くなり、一年では冬は高く、夏は低くなります。また病院の診察室で測った血圧は家庭で測った血圧よりも一般に高くなります。特に家庭では正常血圧なのに診察室では高血圧になる場合を「診察室高血圧症」とか、「白衣高血圧症」と呼んでいます。

 

このように血圧は非常に変動しやすいため、最近は高血圧症の重症度の診断や治療効果の判定に24時間連続血圧測定を行うことが多くなっています。これは一日、筆箱サイズの測定装置を携帯し腕で血圧を測定します。このため日常の動作を行いながらの血圧測定、また夜間睡眠時の血圧測定も可能です。

 

また、現在は多くの家庭用血圧計が販売されていますから、高血圧患者さんには家庭内血圧の測定をお勧めします。家庭内での血圧値を知ることは24時間連続血圧測定と同様に高血圧症の診断・治療効果の判定に重要です。

 

 

高血圧の原因

 

高血圧の原因は大きく分けて二つあります。一つは「本態性高血圧症」といって約95%の方がこの高血圧です。40~50才頃より徐々に血圧が上昇するタイプです。今のところはっきりとした原因が分かっていません。ただし以前より遺伝が大きく影響することが知られています。

 

例えば両親とも本態性高血圧症であれば、その子どもの40~50%が高血圧になるといわれています。現在はいくつかの遺伝的因子と環境因子が関与して高血圧がおこると考えられています。

 

もう一つは「二次性高血圧症」といって、腎臓や副腎などに病気がありそれが原因で高血圧になる場合です。高血圧患者さんの5%程度と頻度は高くありませんが、本態性高血圧症とは治療が異なったり、完全に治る可能性もあります。

 

10代や20代の若い頃より血圧が高いとか、血圧が急に高くなったとか、血圧が高い以外にも頭痛、動悸、浮腫など色々な自覚症状がある場合は二次性高血圧が疑われます。このような場合は的確な診断、治療のために入院して検査を受ける必要があります。専門医にご相談ください。

 

 

高血圧の合併症

 

高血圧を治療せず長年放置しておくと全身の動脈硬化をおこし、色々な合併症がでてきます。高血圧の影響を受けやすい臓器としては、心臓・脳・腎臓および眼などがあります。

 

■心臓への影響

高血圧により心臓の仕事量が増加し、心肥大がおこります。そしてついには心不全をおこしてしまいます。また心臓自身を栄養する動脈(冠動脈)の動脈硬化により狭心症や心筋梗塞をおこしやすくなります。ただし心肥大や狭心症の原因には高血圧以外のものもあり、高血圧があってもなくても、症状があってもなくても検診などで心電図異常を指摘された時には、早めに専門医にご相談ください。

 

■脳への影響

脳につながる動脈や脳内の動脈に動脈硬化をきたし、脳出血や脳梗塞をおこしやすくなります。現在はエコーやMRIで簡単に脳につながる動脈や脳内の動脈の動脈硬化の程度を知ることができます。

 

■腎臓への影響

腎臓内の細かい動脈の硬化により腎臓への血液量が減少して、腎臓はやがて小さくなってしまいます。こうなると腎機能は次第に低下し、ついには腎不全をおこします。腎機能が低下すると腎より血圧を上げるホルモンの分泌が高まり、さらに血圧が上昇し、悪循環を形成します。もともと高血圧でなくても慢性腎炎や糖尿病などで腎機能が低下してくるとだんだんと血圧が上昇します。このため早期に腎臓機能異常をみつける必要があります。

 

■眼への影響

重症の高血圧では脳出血とともに眼底出血の危険性があります。突然視力が低下したり、視界に色が付くような場合はすぐに眼科医にご相談ください。また高血圧にともなう動脈硬化の程度を眼底の動脈をみることにより知ることができます。

 

 

高血圧の予防と治療

 

高血圧、特に本態性高血圧症は生活習慣病の一つであり、予防と治療の基本は生活習慣の改善にあります。この生活習慣の改善として①生活療法、②食事療法、③運動療法があります。

 

①生活療法

生活上の注意として最も問題となるのがストレスです。現代の社会においてストレスを取り除くことは非常に難しいことかもしれませんが、個人個人にあったストレス解消法を考え、工夫することが大切です。また十分な睡眠は精神的ストレス、肉体的ストレスをやわらげ、血圧を低下させます。

入浴は疲労回復やストレスの解消に有用である反面、軽いジョギングに相当する仕事量であるため高血圧の方はあまり熱くない40。C前後のお湯に10分程度の入浴が勧められています。喫煙はストレスを解消する一つの手段ではありますが、動脈硬化を強く促進させるため禁煙に心がけましょう。

 

②食事療法

生活習慣の改善で最も重要なのが食事療法です。食事療法の中でも皆さんが既にご存じのように塩分の制限が大切です。塩分を取りすぎると体自身が水分を必要とし、体内特に血管内に水分が溜まりやすくなります。このため血管への圧力が強くなり血圧が上昇します。日本人は平均で一日約12gの塩分を取っていますが、高血圧の方では約7g程度の塩分制限が必要です。また肥満は血圧を上げ、肥満を改善することにより血圧は下がります。

一日の総摂取カロリーを押さえることにより肥満を解消しましょう。食べる量を減らすことは、その中に含まれる塩分制限にもつながります。ご自身で食事療法を勉強すること、さらにそれを続けることは大変ですので、栄養士と相談しながら食事療法をおこなうことをお勧めします。

 

③運動療法

「適度の運動」は血圧を下げます。しかし、この適度とはどれくらいが適度なのか難しい問題です。一般的には脈拍数が1分間に100~120程度の、早足での散歩が適当と考えられていますが、高血圧の方、高齢の方はすでに心臓や腎臓にある程度の障害を持っている可能性も高く、運動療法を行う場合はまず、専門医に相談し個人個人の「適度の運動量」を決めてください。(関連:適度な運動は心臓病だけでなく様々な病気の死亡率を下げる

 

④薬物(降圧薬)療法

以上に述べたような生活習慣の改善によっても正常血圧とならない方また、重症の高血圧の方ではお薬による治療が必要になります。また、生活習慣をまず変えようとしても変えられず、結局そのまま高血圧を放置する方もいますが、このような方も薬物療法の適応と考えます。

 

現在の降圧薬はその効果も優れており、副作用も非常に少なくなっています。さらに最近では多くの作用機序の異なる降圧薬が発売され、年齢・性別・高血圧に伴う合併症の有無・また他の生活習慣病である糖尿病、高脂血症、高尿酸血症の合併の有無などを考慮にいれて個人個人に最も適した降圧薬の選択を行っています。