一般に、高齢者では赤血球数350万未満、ヘモグロビン濃度11g/dl未満、ヘマトクリット値35%未満のいずれかがあれば、貧血と考え原因検索を積極的に行うようにしています。また、高齢者の貧血では悪性腫瘍、感染症、膠原病、腎疾患などを背景にもつことが多いのが特徴です。

 

病気が関係している場合、または治療のための薬剤が関係している場合には、病気の治療や薬剤の変更によって貧血の改善を図りますが、それらが関係していない場合には、鉄分や葉酸、ビタミンB12などの栄養素を多く摂取することで改善を図っていきます。(関連:乳幼児・子供の貧血|種類別にみる症状と治療法(薬物療法など)

 

 

貧血の症状と所見

 

貧血の一般の自覚症状である、顔面蒼白、易疲労感、めまい、動悸、息切れなどが若年者に比べて出にくいことがあります。また、その一方で、動脈硬化や呼吸器疾患などを伴っている場合には、心不全などをきたして重症になることもあり侮れません。

 

<診察所見>

皮膚・粘膜の蒼白、心臓の雑音聴取などが認められます。その他、背景として、以下のような事項も重要な所見となります。

  • 悪性腫瘍が疑われれば腹部腫瘤の有無、
  • 感染症が疑われれば発熱の有無、
  • 膠原病が疑われれば発熱および関節痛などの有無、
  • 腎疾患が疑われれば浮腫の有無

 

 

貧血の検査所見

 

一般血液検査の項目(赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値、白血球数・血小板数)以外に、白血球像、網状赤血球数、血清鉄、総鉄結合能、フェリチン値の測定も詳細な診断の参考になります。さらに必要なら骨髄穿刺や血清エリスロポエチンの測定も行います。その他、消化器系の悪性腫瘍などを考えて、便潜血の有無を検査します。

 

なお、血液検査での赤血球指数、特に平均赤血球容積(mean corpuscular volume;MCV,ヘマトクリット(%)÷赤血球数(106/μl)×10;正常87~103)で小球性・正球性・大球性の貧血に分類します。

 

 

貧血の分類・各疾患の概説

 

貧血には、鉄分不足が原因の「小球性貧血」、血液異常に伴う「正球性貧血」、ビタミンB12や葉酸の欠乏に伴う「大球性貧血」などがあり、それぞれによって原因や治療法が異なります。

 

小球性貧血

鉄の欠乏状態であり、高齢者における原因は、長期の摂食不良・胃腸管切除後・癌や潰瘍などの消化管による出血などが考えられます。治療としては経口または静注での鉄剤投与です。なお、高齢者で重要なことは原因検索であり、積極的に消化管検査・子宮などの悪性腫瘍の検索を行うことです。

 

正球性貧血

血を造る能力が悪い再生不良性貧血や、血球が破壊される溶血性貧血、腎臓疾患のためにエリスロポエチン不足による腎性貧血などがあります。

 

■再生不良性貧血

原因不明や薬剤が原因の場合などがありますが、一般に汎血球減少(全ての血球減少)のことが多く、そのため貧血以外に出血や発熱(感染症による)などの症状も見られます。難治性の場合が多く、骨髄検査など精密検査を要する疾患です。

 

■溶血性貧血

原因は遺伝性や薬剤・膠原病などの免疫疾患など多彩ですが、貧血以外に血球の破壊による黄疸や褐色尿(ウロビリノゲンやビリルビン尿)が見られます。原因検索や治療に難渋する場合もあります。

 

■腎性貧血

腎臓疾患の症状(浮腫など)を伴う場合も多く、貧血の治療はエリスロポエチンの投与です。

 

大球性貧血

ビタミンB12や葉酸の欠乏が影響して起こる貧血です。原因は胃腸の手術による吸収障害・摂食不良・薬(抗けいれん剤など)・飲酒があります。貧血以外に、ビタミンB12欠乏では感覚異常が伴うことがあります。また、胃癌の合併率も高く注意を要します。欠乏しているビタミンB12や葉酸の補給が治療のメインとなります。

 

なお、上記以外に高齢者では、骨髄異形成症候群や白血病による貧血があります。骨髄異形成症候群では、通常の貧血治療(鉄剤、B12、葉酸など)が無効なことから不応性貧血ともよばれ、数カ月から数年で白血病に移行する例もあり重要な疾患です。骨髄異形成症候群や白血病では症状として、貧血症状以外に、出血・感染症症状(発熱など)が高頻度に見られ、これらは骨髄検査で異常な細胞(腫瘍細胞)が見られ、その程度や細胞の性状にて様々に分類されています。

 

 

必要な栄養素を食事で摂れない場合

 

体に必要な栄養素は、基本的に食事から摂取することになりますが、高齢者の場合は、20~40代などの成人と比べて食事量が少なくなりますので、食事のみで必要な栄養素を十分に摂取できない場合があります。

 

また、貧血と関わりの深い「鉄分」「葉酸」「ビタミンB12」は、食事から取りにくい栄養でもあることから、病気が起因している場合においては、病院の処方薬や市販のサプリメントなどから積極的に摂取するようにしましょう。