近年、脳血管障害疾患の発生率が増加傾向にありますが、その背景には高齢化・少子化が強く関与しています。脳血管障害を引き起こす原因の一つに“加齢”があり、多くの場合には、加齢によって脳血管の健康状態が悪化し、それが原因となって「くも膜下出血」や「脳梗塞」、「脳内出血」などの脳血管障害疾患を引き起こします。

 

これらはいずれも重篤になりやすく、場合によっては死に至るケースもありますので、関係する症状がみられる場合には、すぐに病院に受診し、精密な検査を受けなければいけません。特に“激しい頭痛”がみられる場合、程度が軽くても“頭痛が続く”場合には、一度病院に受診してください。

 

 

くも膜下出血

 

くも膜下出血の原因には、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、高血圧、脳動脈硬化性病変、脳腫瘍、髄膜炎、全身の出血傾向(白血病、血友病など)など多くの疾患があげられますが、最も多いものが脳動脈瘤の破裂によるものです。 脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血は、40~60歳に多く、通常突発する激しい頭痛で発症し、しばしば嘔気や嘔吐を伴います。

 

くも膜下出血が軽度であれば、意識を失うことはありませんが、出血が激しくなれば、意識を消失し、さらに重症の場合にはその場で命を失うことがあります。時には脳実質内にも出血することがあり、その時には運動麻痺などの局所症状を伴うこともあります。また、動脈瘤の部位によっては、動眼神経麻痺などの脳神経麻痺を伴うこともあります。

 

くも膜下出血の検査

■CT scan (コンピューター断層撮影)

くも膜下出血直後には、CTにてほとんどの場合、その診断は可能です。CT上、脳底部の髄液槽に沿って高吸収域を認めますが、発作後日が経つにつれて等吸収域から低吸収域に移行するため、診断は困難となります。また、CT上の血腫の部位や血腫量より、破裂動脈瘤の部位や予後の推測が可能となっています。

 

■腰椎穿刺

最近ではほとんど行われていませんが、CTでは診断が困難な発作後数日以上経過した症例に対しては、血性髄液を証明するため、腰椎穿刺が必要となることがあります。

 

■MRI(磁気共鳴画像)

くも膜下出血急性期の診断はMRIでは困難で、特殊な撮像法でのみ診断可能です。

 

■脳血管撮影

一般にCTやMRIでは、動脈瘤の診断はできないため、脳血管撮影にて脳動脈瘤の有無、その部位、大きさや形状などの診断を行います。

 

くも膜下出血の治療

くも膜下出血の治療には、くも膜下出血後におこる脳動脈瘤の再破裂、脳血管攣縮、水頭症などに対する治療を行います。脳動脈瘤の再破裂に対する治療としては、観血的な手術(開頭術)とカテーテルを用いた血管内手術があり、手術としては、動脈瘤の頚部を金属製のクリップで閉塞させるネッククリッピング術が最も行われ、最も確実に再破裂を防止できます。しかし、ネッククリッピングできない場合や動脈瘤の頚部が一部残存した場合には、動脈瘤被包術やトラッピング術も行われることがあります。

 

脳血管攣縮とは、くも膜下出血後数日から2~3週間後に脳血管が狭小化する病態で、このために脳血流が低下し、脳梗塞によるさまざまな症状を呈することがあります。この脳血管攣縮の真の原因は未だ不明であり、根本的な治療法は見つかっていません。しかしながら、各種の治療法を行うことで重篤な症状を呈する患者は全くも膜下出血の5%前後にまで低下してきました。

 

水頭症とはもともと脳内にある水(脳脊髄液)が異常に貯留した状態のことを指し、くも膜下出血では脳脊髄液の循環障害や吸収障害をきたすため、水頭症を起こしやすい傾向にあります。このため、急性期には脳脊髄液を体外に排除する髄液ドレナージを留置したり、慢性期には髄液を腹腔へ流す脳室-腹腔短絡術を行うこともあります。

 

 

脳梗塞

 

脳梗塞とは、頭蓋内外の動脈の狭窄ないしは閉塞のために脳の循環障害がおこり、様々な神経症状が出現することを言い、臨床的にはアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞、その他の梗塞に分類されます。

 

アテローム血栓性脳梗塞は頭蓋外の主要動脈あるいは頭蓋内の主幹動脈においてアテローム硬化が進行し動脈内腔が狭小化し、そこに血栓形成が起こって閉塞にいたるものです。場合によってはアテローム硬化部位に付着した壁在血栓が遊離し、末梢に塞栓現象を起こすことも稀ではありません。心原性脳塞栓症は心筋梗塞、心房細動、弁膜疾患などの心疾患により心腔内に形成された血栓が遊離し、脳動脈へ流入することが原因であり、ラクナ梗塞は高血圧、糖尿病における小動脈障害が原因であると考えられています。

 

アテローム硬化による動脈狭窄は、内頚動脈系では内頚動脈分岐部、サイフォン部、中大脳動脈三分岐部、また椎骨動脈系では鎖骨下動脈よりの分岐部、脳底動脈起始部、終末部に発生しやすい傾向にあります。脳塞栓症は中大脳動脈潅流域に最も多く発生し、ラクナ梗塞は基底核、視床、内包、橋に好発します。

 

一般的には脳梗塞は血圧が低下し血流障害を来すため、夜間に多く、覚醒して発見されるのが普通であるといわれていますが、実際には発症時間は日中に多いという説も言われています。通常、虚血性神経障害症状は突発しますが、その後一定時間内に消失する、短時間内に進展増悪する、または、診断されるときにはすでに完成しているような発作型があります。一定時間内に症状が消失するものは、24時間以内に症状が消失する一過性脳虚血発作(TIA)と24時間以上続き、3週間以内に消失する可逆性虚血性神経障害(RIND)に定義されています。

 

局所神経症状は血管閉塞部位によってさまざまです。内頚動脈系の閉塞では一過性失明(一過性黒内障)、意識障害、反対側片麻痺、感覚障害、同名性半盲、優位大脳半球の障害では失語が見られます。椎骨脳底動脈系の閉塞では交代性片麻痺または両側性四肢麻痺、感覚障害、同名性半盲、めまい、耳鳴、眼振、複視などがみられるが障害されるレベルによって症状が異なります。

 

脳梗塞の検査

■CT scan(コンピューター断層撮影)

発症直後は異常を認めず、3~6時間後より軽度低吸収域をしめすようになり、12時間以上たつと大部分の例で低吸収域をみます。3日目になると低吸収域がはっきりし、7日目には、さらに低吸収域の程度が強くなります。その後、低吸収域は一時的に消失する時期がありますが、最終的には髄液に近い低吸収域を示します。また、造影CTでは時期により変化する高吸収域が見られますが、1~2ヶ月後には造影効果は消失します。

 

■MRI(磁気共鳴画像)

MRIはCT scanよりも脳梗塞の診断能は優れ、時間的にもより早く診断が可能となっています。脳幹部・小脳梗塞やラクナ梗塞の診断では遙かに優れていて、MRA(MR angiography)では狭窄・閉塞血管の同定も可能なことがあります。

 

■脳血管撮影

狭窄・閉塞血管の同定、狭窄の程度の確認、側副血行の確認ができ、診断、治療上決定的な検査です。

 

■脳血流測定

血管狭窄、または、閉塞による血流低下の程度や範囲、また脳血流予備脳を知ることができ、診断、治療上重要な検査です。

 

脳梗塞の治療

血流再開、側副血行の改善を目的とした血栓溶解療法、血液希釈療法、抗血小板療法など保存的療法が主体です。また抗浮腫剤の投与にて頭蓋内圧亢進に対する治療を行います。近年、急性期に血栓溶解剤を選択的に閉塞動脈より投与し血行の再開を計る血栓溶解療法も施行されています。

 

外科的治療としては、TIAがあり、症状に一致する側の頚部内頚動脈分岐部が高度狭窄しているときに脳梗塞発症予防のため、頸動脈内膜切除術(CEA)を行います。頭蓋内動脈に狭窄ないし閉塞があり、TIAが頻発しているときには頭蓋外・頭蓋内バイパス術を行います。慢性期には再発予防と脳保護のための薬物療法を実施していきます。

 

 

脳内出血

 

脳出血の原因には、高血圧、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、アミロイド・アンギオパチィー、全身の出血傾向(白血病、血友病など)、抗凝固剤使用や脳腫瘍など多くの疾患がありますが、そのうちの60%を占めるのが高血圧性の脳内出血でです。

 

高血圧性脳内出血は、高血圧により脳血管、特に穿通枝と言われる細い動脈に変性が起こり、そのため血管壊死や小動脈瘤をきたし、出血をおこすものと考えられています。発症年齢は、高血圧症や動脈硬化がおこる50~60歳台が約半数を占めていますが、最近では発症年齢が高くなりつつあります。出血を起こす場所としては、大脳が最も多く、次いで脳幹(橋など)、小脳がこれに次ぎます。大脳出血は、部位によって、被殻出血、視床出血および大脳皮質下出血(頭頂葉に最も多い)に分けられます。

 

症状としては、昼間で仕事をしている時突然発症することが多く、発症後数時間たってから症状は完成しますが、その症状は出血の部位によって異なります。被殻出血では、出血と反対側の運動麻痺と感覚障害は必発で、血腫が大きくなれば意識障害、出血側への眼球の偏位、視野障害などが出現。視床出血では、出血と反対側の感覚障害、不全片麻痺のほか、上下の眼球運動障害、瞳孔異常が加わります。

 

また、血腫が大きくなれば、意識障害も加わり、優位半球(多くの場合は左大脳半球)の場合には言語障害も伴います。大脳皮質下出血では、部位に応じて症状が違う。頭頂葉出血では反対側の感覚障害、後頭葉出血では視野障害、側頭葉出血では言語障害(感覚性失語症)や視野障害、前頭葉出血では反対側の運動麻痺(上肢に強い麻痺)などが頭痛とともに出現します。小脳出血では、頭痛、嘔気、嘔吐、めまい、起立および歩行不能で発症し、脳幹出血は最も重篤な出血で、意識障害(昏睡など)、呼吸障害、四肢麻痺などが出現します。

 

脳内出血の検査

■CT scan (コンピューター断層撮影)

発作初期より血腫の存在部位に一致した高吸収域を認め、容易に診断可能です。また、しばしば合併する脳室内出血や周囲の脳浮腫の状態の診断にも有用この血腫の高吸収域は徐々に吸収され、発作後3週間で等吸収域に、1ヶ月で低吸収域に変化してきます。また、造影剤を静注した後にCT scanを行う(造影CT)ことで、出血源の診断(脳動静脈奇形など)を行うこともあります。

 

■MRI(磁気共鳴画像)

MRIでは脳内血腫は血腫の時期に応じて信号強度は変化していきますが、血腫と周囲の脳との関係や合併する血管病変の検索のために行うことが多々あります。

 

■脳血管撮影

高血圧性脳内出血と明らかに診断した場合には行いませんが、脳動脈瘤や脳動静脈奇形などが疑われたり、高血圧の既往がないときには出血源の検索のため、行うことがあります。

 

脳内出血の治療

脳内出血では出血部位やその大きさ、患者の状態によって治療法が異なります。どの部位の出血でも小出血であれば、止血剤や抗浮腫剤などを点滴して、保存的に治療を行っていきます。

 

外科的な治療法(手術)の対象となり得る血腫部位としては、被殻出血、皮質下出血、小脳出血が多く、視床出血や脳幹出血は手術の対象とはなりません(なりにくい)。手術としては、全身麻酔下に開頭して血腫を除去し、出血源を電気凝固する”開頭血腫除去術”と局所麻酔下に頭蓋骨に一つ穴を開けて、カテーテルを血腫部位まで挿入し、血腫を吸引し、術後も血腫溶解剤を注入して血腫の溶解を促す”定位的血腫吸引術”とがあります。

 

”開頭血腫除去術”は、中等度以上の大きさの被殻出血、皮質下出血や小脳出血に対して行われますが、最近では一般的に救命を目的に行われています。また、”定位的血腫吸引術”はどの出血に対しても行われますが、神経症状の回復を目的にしたり、全身麻酔下の開頭血腫除去術ができない患者に対して主に実施します。