体の働きが衰え、複数の病気をもつお年寄りに対し、漢方治療は、体全体の調子を整えながら、局所の症状も改善していきます。

 

慢性的な胃の不快な症状があり、何となく元気のない場合などに、漢方治療が適しています。

 

 

■お年寄りと漢方治療

 

お年寄りの病気には、「生理機能や免疫力が低下して、感染症にかかりやすい」「同じ年齢でも、体力などの個人差が大きい」「複数の病気があり、薬が多い」「明確な診断が困難」といった特徴がみられます。

 

このようなお年寄りの病気に対して、漢方治療を行うと、

 

①全身状態を改善するので、免疫力がある程度高められる

 

②病気ではなく、人の体全体を治療の対象ととらえるので、その患者さんに合わせた治療が行える

 

③1つの処方にいくつもの生薬が使われる漢方薬は、作用する範囲が広いので、さまざまな症状の改善を図ることができる

 

④西洋医学的な病名がつかない場合でも、患者さんの体質や症状に合った治療が行える

 

といった効果が期待できます。

 

 

■胃もたれ・食欲不振の診断

 

胃もたれや食欲不振がある場合、西洋医学では、まず内視鏡検査を行います。

 

そして、がんやかいようなどがないことが確認されると、「機能性消化障害」の「運動不全型」と診断され、「消化管運動機能改善薬」などで治療します。

 

一方、漢方治療では、図1のように漢方独自の診察を行い、「証(図2)」や「気・血・水」などの考え方により、患者さんの全身状態をとらえます。

 

慢性的な胃もたれ・食欲不振があるお年寄りの場合は、ほとんどが「虚証」とみられ、胃もたれ・食欲不振のほかに、図3のような症状が起きていることがよくみられます。また、多くの場合、「気虚」、「水毒」の状態に陥っていると考えられます。

 

なお、漢方治療を希望する人で、かいようやがんなどの病気がないことが確認できていない場合は、漢方治療を始める前に、内視鏡検査が勧められることがあります。

 

 

■代表的な処方と効果

 

虚証のお年寄りの胃もたれ・食欲不振には、一般に「六君子湯」を処方します。六君子湯を服用しても効果が見られない場合は、胃もたれ・食欲不振以外の症状に合わせて処方を変更します。

 

胃もたれ・食欲不振に対する漢方薬の効果は、ほとんどの場合、数日~2週間ほどで現れてきます。胃の調子がよくなるほか、全体的に体調がよくなったと感じるようです。