自己診断で鬱病の可能性が高い、または医師から鬱病と診断を受けている方の中で、遊びに行けたり、ゲームやSNSを積極的に行うことができる場合、もしかしたら「適応障害」かもしれません。

 

もちろん、鬱病であっても症状に”波”がありますので、時期によっては活動的になれることがありますが、抑うつ状態にあっても、遊びやゲーム、SNSなど興味があることに対して意欲的になれることが多い場合には、適応障害の可能性があります。

 

 

気分が大きく落ち込む精神症状について

 

気分が大きく落ち込む、いわゆる「抑うつ状態」になる精神疾患・障害には、大きく分けて「鬱病」「気分変調性障害」「適応障害」があります。いずれも発現する症状は類似していますが、症状の程度や期間などに細かな違いがあります。

 

<主な共通の症状>

気分・思考の状態身体的症状
  • うつ気分
  • 興味や喜びの喪失
  • イライラ感
  • 気力の減退
  • Ÿ強い罪責感
  • 思考力や集中力の低下
  • 疲れやすさ
  • 食欲の障害
  • 睡眠の障害
  • 精神運動の障害(制止または焦燥)
  • 死への思い
  • Ÿ倦怠感
  • 頭痛や腰痛
  • 肩こり
  • 体の節々の痛み
  • Ÿ胃の痛み
  • Ÿ食欲不振
  • 下痢や便秘などの胃腸症状
  • 発汗
  • 息苦しさ

 

■鬱病(大うつ病)

強い抑うつ状態が断続的に起こり、興味があることや楽しいと感じていたことに対しても意欲が湧きません。強い抑うつ状態は、朝に起こるのが最も多く、夕方~夜にかけて軽快していく傾向にあります。なお、症状の発現には”波”があり、多くは体調の良いときと悪い時が交互に訪れます。

 

■気分変調性障害

軽度~中等度の抑うつ状態がほぼ一日中続き、それが長年にわたって継続します。ある程度のことに対しては意欲がでることが多いものの、意欲度は総じて低い傾向にあります。

 

■適応障害

軽度~中等度の抑うつ状態が不定期に訪れます。勉強や仕事などのストレスを感じることに対しては無気力になりがちで、趣味や遊びに対しては意欲的に行動できる(ことがある)傾向にあります。(関連:鬱じゃない!鬱っぽい症状が続く「適応障害」の診断・原因・治療

 

 程度発現時期特徴
鬱病重度朝に起こることが多いあらゆる物事に対して意欲が沸かない
気分変調性障害軽度~中等度ほぼ一日中あらゆる物事に対する意欲度が低い
適応障害軽度~中等度不定期ストレスを感じることに対しては無気力で、趣味や遊びに対しては意欲的になれる

 

 

鬱病と適応障害について

 

このように、勉強や仕事などのストレスを感じることに対しては意欲が起こらず、遊びやゲーム、SNSといった好きなことに対して意欲的になれる場合には、「適応障害」の可能性があります。気分変調性障害もありますが、同障害は長期的に発症し続ける、いわば“慢性の鬱病”であるために、鬱病ほどの意欲低下はみられないものの、好きなことに対しても意欲が起こらない傾向にあります。

 

適応障害とは、自分を取り巻く環境やストレスに対処しきれなくなって発症するもので、鬱病の可能性が低く、他の精神疾患・障害に該当しない場合に診断される病名です(厳密には病気とは言えない)。“適応”という名がついているように、何か新しいことをし始めた時に、その状況に上手く適応できない場合に発症しやすく、多くは状況が変わることで回復に向かいます。

 

一般的に、鬱病になると何に対しても意欲が沸かず、抑うつ状態が毎日のように続きますが、適応障害は抑うつ状態がでることがあるものの、それが毎日ではなく不定期に起こり、元気に活動できることが多々あります。このことから、「甘えなのではないか」と感じる方が多いのですが、適応障害の原因となるのが環境などにおける大きなストレスなので、それを回避するために勉強や仕事などの嫌なことに対しての意欲低下がみられ、遊びやゲーム、SNSやといった興味があるもの、好きなことに対しては意欲的になれる(ことがある)という特徴があります。

 

この特徴は、ストレス回避のために一種の防衛本能とも捉えることができるため、興味があるものや好きなことに対して意欲的になれるというのは、「甘え」ではありません。なお、抑うつ状態は不定期に起こる(主に嫌なことがあった後)傾向にありますので、嫌なことに対しても意欲的になれることがあります。

 

 

各行動における感情と考え

 

上述のように、「遊び」や「ゲーム」、「SNS」のように楽しいと感じることに対しては意欲的になれる(ことがある)適応障害ですが、それぞれの行動における感情や考えは変わってきます。

 

■遊び(娯楽・旅行など)

娯楽施設に行ったり、旅行に行ったり、ショッピングなどに対して意欲的になれる場合は、単純に楽しみたいからという理由のほか、気分転換をしたいという考えがあると言えるでしょう。抑うつ状態になると、気持ちが閉鎖的になりがちで、「やらなければいけない、でも出来ない」というジレンマの中にいますので、“行動する”という気持ちが遊びに繋がっていると考えることができます。

 

■ゲーム・漫画

ゲームや漫画に対して意欲的になる場合、楽しいという感情のほか、暇つぶしや現実逃避という考えもありえます。ゲームや漫画は、大きな行動力を必要とせず、自宅で簡単に楽しむことができ、また現実世界と分離していることで、いわゆる現実逃避ができます。もちろんこれも「甘え」ではなく、ストレス回避の防衛本能の一つと言えるでしょう。

 

■SNS(TwitterやFacebookなど)

TwitterやFacebookなどのSNSを使用している場合は、他者ならびに外界との接触を図る目的と考えられます。それ自体が娯楽目的の場合もありますが、抑うつ状態にあると気持ちが閉鎖的になり、孤立を感じることが多々ありますので、その解消策として意識的・無意識的に関わらずSNSを使用しているわけです。

 

 

遊びたくないという心理について

 

適応障害であっても、常に遊びに対して意欲的になれるわけではありません。抑うつの程度によって、またその時の感情・心情などによって大きく異なりますが、一般的に「ストレスを解消したい」、「現実逃避をしたい」など、前向きな思考が働いた時にのみ意欲的になれる傾向にあります。

 

抑うつ状態にあると気分が大きく落ち、また何かしなければいけないけど出来ないという、一種のジレンマの中にいますので、自分に対する嫌悪感や自責の念が強く働きます。そういった症状が強く出現している時には、鬱病のように楽しいことや興味があることに対する関心が薄れ、「何もしたくない」という状態に陥ります。

 

 

遊びに誘うことについて

 

このように、適応障害でも気分のムラが激しいことが多々あり、気持ちが大きく落ちている場合には、食事をとることも、眠ることも、トイレに行くことさえ億劫に感じますので、遊ぶことに対して意欲が湧きません。

 

「以前元気に遊んでいたのに、今回はなぜダメなのか」、その答えは上述の「気分のムラ」にありますので、返信がない場合や断られた際には、気持ちが大きく落ち込んでいると理解し、無理に誘わないようにしてください。また、断られたとしても、それで終わらすのではなく、数日や数週間おいても、再度誘ってあげると良いでしょう。もしくは、「遊びたいからまた連絡してね」というように、相手からの連絡を待っておくのも良いでしょう。

 

また、遊ぶ際には相手の体調を考慮してあげてください。適応障害になると、抑うつのほかにも身体の倦怠感や疲れやすくなります。遠くへ外出するとなると結果的に負担になりかねませんので、率先して計画を立てる場合には、相手の体調を考慮して、近場かつ疲れにくい遊びを計画してあげましょう。

 

加えて、遊んでいる時に、急に抑うつ状態に入ることがあります。その場合には無理をせず、ゆっくりと帰路につくようにしてあげてください。何においても「理解」が大きな助けになりますので、適応障害について、また相手について、少しでも理解できるように努めて頂ければ幸いです。